第7回目は夏の脂の乗った真鯵
鯵の鮮烈な旨味と薬味の清涼感には、ポルトガル北西部ミーニョ地方のヴィーニョ・ヴェルデが響き合う。わずかな微発泡と柑橘の酸味、そして塩味を帯びたミネラルが、まるで大西洋の風を握りに吹き込むかのようだ。
① 生姜・ネギ仕立て × ヴィーニョ・ヴェルデ(ロウレイロ主体)
◯ ペアリングのロジック
- 生姜の清涼感とネギの辛香に、ヴィーニョ・ヴェルデ特有のレモンやライムの酸味が共鳴。
- 微発泡の軽やかさが、鯵の脂をリフレッシュし、薬味の余韻を心地よく引き延ばす。
- 海風を思わせるミネラルが、光物の持つ海の香りと重なり、鮨を“海と陸の詩”へと昇華する。
② 酢締め仕立て × ヴィーニョ・ヴェルデ(アルバリーニョ主体)
◯ ペアリングのロジック
- 酢で軽く締めた鯵の酸味に、アルバリーニョの熟した柑橘や白桃のニュアンスが調和。
- ふくよかな果実味が酸味を包み込み、鮨全体を柔らかな余韻に仕立てる。
- 大西洋沿岸の白ワインが、江戸前の光物に異国の清風を吹き込む。
── 香味の清涼か、酸の調和か。
鯵の握りは、薬味とともにワインの個性を引き出す「光物ペアリング」の象徴である。
鯵は「光物」の代表として、鮨文化の奥行きを映す存在。赤身の旨味と青魚特有の香りは、鮨職人の仕事によって整えられ、薬味の生姜とネギが爽やかな余白を添える。鮨の中でも最も香味のバランスを問われるネタのひとつである。
その相手に選ぶヴィーニョ・ヴェルデは、ポルトガルの大西洋風を宿す若々しい白。レモンやライムの柑橘香と、わずかな微発泡が鯵の脂を洗い流し、海のミネラルが薬味と共鳴する。
鮨の薬味とワインの酸──両者が交差することで生まれるのは、清涼な調和。まさに「海の鮨」と「海のワイン」が一つになる瞬間である。